S001日本萬歳百撰百笑勇ましい子供遊び 

清親　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　静岡県立中央図書館　蔵

明治廿八年四月　日印刷

　　　仝年仝月　日發行

印刷兼發行者　松木平吉　東京日本橋吉川町二番地

勇ましい子供遊び　骨皮道人

栴檀は嫩より芳し（せんだんはふたばよりかんばし）とやらで、日本男児ハ僅かに五六歳の頃ひよりして其勇気感ずに餘りあり、是も其中の一人にて或日のこと

ちゃんちゃん坊主の芋虫め。ちゃんちゃん坊主の蛆虫め。戸惑ひしたのか寝惚（ねぼけ）てる。氣でも振れたる耄碌か。豚の様なる頭して。擂木（すりこぎ）見たよな足をして。お先真っ暗恥知らず。命知らずの無鉄砲。面でも洗って出直せよ。

と流行の軍歌を唄ひながら餘念もなく畳の上をトントンと叩き、兵士の人形を踊らして居る所へ、通り掛ったちゃん的が、何心なく覗ひて見ると、こハそも如何に這ハ如何に（こはそもいかに、こはいかに）、己れが大禁物なる日本兵士が、ズラリと並んで居たから、是ハとばかり打驚ろいてキアツと叫び聲に、小児ハ何事ならんと行て見れバこの始末ヿヲヤヲヤヲヤちゃんちゃん坊主が目を廻したよと云へバ、ちゃん的ハ虫の息ながらも例の負惜ミヿナニ目ハ廻しませんが膽（きも）を潰しました

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